「高齢化」に適した診療が必要 1/3

木下循環器クリニック:木下 信一郎

「ポンプとパイプの医者です」と自らを紹介する木下医師は、医大での勤務を経た後、父の医院を継いで16年目を迎えた。「街のお医者さん」の視点は、医療技術の進歩と高齢化する患者の診療をどのように捉えているのか。吉祥寺のクリニックを訪ねて、話を聞いた。

取材・執筆 / 石田 亮一

◆ 丁寧な問診で、検査は最小限に

「父親の姿を見ていて、理系が好きだったし、医者なら自分にもやれそうだと思った」と話す木下医師は、医学を志したきっかけをそう振り返る。父親の健康上の理由から、15年前に医大勤務を辞めて、吉祥寺のクリニックを引き継いだ。木下医師は自分の専門分野である循環器内科を「ポンプとパイプの医者」だと説明する。

木下医師への地域の信頼は厚い

医院を継いで16年目を迎えた木下医師への地域の信頼は厚い

そして、いかにして検査を少なくして患者の負担を減らし、的確な診断をするのかが、開業医としての「取り柄」だと話す。そのためには、丁寧な問診がもっとも重要だという。「最近は検査技術が進歩して、病気でないことを確認するために検査する場合すらある。循環器の検査では放射線を使用する場合が少なくない。

不要不急の検査で余計な被ばくを避けることも、患者の負担を減らすことになる」。以前と比較して、血管造影やコンピュータ断層撮影(CT検査)などの被ばく量は少なくなっているという。しかし、それでも患者の被ばくは必要最小限に抑えたいというのが、木下医師の基本的な考え方だ。

◆ 「最新」だから、優れているのか?

「最新の薬が、どの患者に対しても優れた効果をもっているのだろうか」そう問いかける木下医師は、「かならずしも、そうとは言い切れない」と続ける。患者に最適だと判断すれば、あえて1世代前の薬を処方することもある。

デジタル表示よりも「自分の耳と目を信じる」

見慣れた水銀柱を利用した血圧計もデジタル化されているが、
デジタル表示よりも「自分の耳と目を信じる」という

また、医学的に一般的な治療方法だとしても、患者それぞれの事情や環境を考えると、自ずから画一的な対処にはなるはずがない。医大を離れて開業医となった現在、医学の最先端にいるのではない、という自覚はある。とはいえ、日々進歩している医学を学び続けるという姿勢は、医大時代と変わることはない。

「大学には研究と教育という、診療以外の目的もあるが、医大時代の『勉強』ともっとも異なるのは、開業医の現在の方が、より患者に直結した勉強をしている、しなければならない、ということ。そして、開業医はオールラウンドプレイヤーとしての資質が求められ、そのための勉強が必要になる」

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